抄録
学校教育現場では,今ようやく学習障害 (LD) 児の存在が認知され,教育的な支援が本格的に始まったところである。学校教育におけるLD教育の実践は,従来の「通常の教育」と「障害児教育」の枠組みを超えた「特別支援教育」の理念に基づくもので,これまでの学校教育システムを大きく変える可能性を持っている。現在,全国の都道府県・政令指定都市では,1999年の「学習障害児に対する指導について」の報告に示された指導モデルを実践する試みが行われ,LD児への組織的な支援が現実のものになろうとしている。わが国の学校教育の中にLD教育を定着させ,効果的な教育支援を実現していくためには,(1)LD児の発達特性に応じた個別教育計画の作成,(2)学習のつまずきに応じた指導方法の確立,(3)LD専門指導者の養成,(4)教育と医療の連携,が必要である。また,LDに特徴的な「聞く・話す・読む・書く」の問題については,言語の専門家である言語聴覚士と学校との連携が求められる。