失語症研究
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原著
失語症の言語治療効果についての因子分析研究
—中核的改善因子の抽出について—
東川 麻里波多野 和夫
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2002 年 22 巻 2 号 p. 143-152

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抄録

標準失語症検査 (SLTA) による評価を受けた 195例の失語症言語治療例について, その改善値の因子分析を行った。 改善値は, 第1回 (治療開始時) SLTAと第2回 (治療後または治療中) SLTAの下位テスト得点の差と定義した。 したがって 26個の多変量データである。 その結果として7個の改善因子が抽出された。 第1改善因子は, 「非変換的」言語産生と複雑な言語情報処理の改善因子と解釈され, 言語治療による失語の本質的改善の体現として, 「中核的改善因子」という意味づけが可能であった。 これに対し第2~7改善因子は, 入出力の変換 (復唱など) や理解 (聴理解と読解) の改善因子として, より道具的・様態的性質が濃厚であった。 中核的改善因子と, 主要な患者要因 (年齢,教育歴,経過,失語重篤度など) や総合改善得点との相互の相関を検討し, 先行研究との比較のうえで, この中核的改善因子の失語治療における重要性を論じた。

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© 2002 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会 (旧 日本失語症学会)
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