失語症研究
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失行のみかた
鎌倉 矩子
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2002 年 22 巻 3 号 p. 225-231

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抄録

20世紀の初頭に Liepmann が失行の概念を提唱して以来,臨床家たちは多くのジレンマに直面してきた。種々の修正提案にもかかわらず,Liepmann の考えは基本的には無修正のままである。現在,臨床の場面で用いられている失行の検査法はほぼ共通している。観念運動失行の検出のためには社会慣例的な動作やパントマイムなど物品を使わない動作を用い,観念失行の検出のためには実在の物品の使用を課すのが一般的である。このほかに描画や物品構成や更衣が加えられる。しかし患者が示すエラーの質は,物品を用いる課題と用いない課題とで変わらないという指摘がある。観念運動失行,観念失行のいずれについても,これが heterogenous だという主張がある。新たな視点で動作と行為の誤り特性を分類することは,行為の高次障害の新たな理解を生む可能性がある。これについて著者らは質的研究による新たな試案を作成中である。また残る問題として行為喚起の文脈という問題がある。この視点を加えることが,より発展した行為障害の定義のために必要だと思う。

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© 2002 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会 (旧 日本失語症学会)
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