失語症研究
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原著
左被殻出血による失語症に関する臨床的研究
—三次元的脳血流測定による検討—
牧下 英夫
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キーワード: 左被殻出血, 失語症, 脳血流
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1987 年 7 巻 1 号 p. 10-20

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抄録
左被殻出血41例の言語症状と single photon emission CT による脳血流を対比検討した. 10 例の非失語と 31 例の失語例を認め,失語症状は自発話流暢性と聴理解の障害の程度にあまり解離がみられないという特徴があった.脳血流低下は X 線 CT の異常所見より広範囲で,脳表部左中大脳動脈灌流域 (MCA) におよび,失語症の発現の有無,失語型の差異は深部基底核領域よりも MCA での血流低下と関連することがわかった.また MCA 前部血流量と同後部血流量は正の相関を示し,失語症状の特徴と関連すると考えられた.しかも自発話流暢性の障害と MCA 前部血流量の低下,および聴理解障害と同後部血流量の低下との関連性は脳表部に主病巣をもつ脳梗塞失語例と同様にみられた.血腫径の検討や血腫吸引術前後の経過などより,大脳表層部の血流低下には血腫による mass effect が重要な因子の一つになっていると考えられたが,慢性期での遠隔部血流低下には mass による二次的不可逆的脳損傷や transneural な遠隔効果など複数の要因を考える必要があると思われた.
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© 1987 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会 (旧 日本失語症学会)
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