失語症患者の職業的予後を明らかにし,林の数量化理論第 II 類 (カテゴリカル重判別分析) を用いて,職業復帰に影響すると思われる17要因の影響の程度を解析した.対象は,全国 85 の言語治療施設で 1981 年に初診した失語症患者のうち,1984 年に行なった追跡調査で有効回答の得られた 479 名である.主な結果は次の通りである.
1) 言語治療受診後 3 年経過時に就業していた者は,61 名 (12.7 %) であった.これらの就業者は全員が発症前有職者 (総数 344 名) で,職業復帰率は 17.7 %となった.
2) 61名の職業復帰の形態は,19名 (31.1 %) が配置転換,5 名 (8.2 %) が転職,それ以外の者は元職復帰であった.
3) 職業復帰に最も強く影響していた要因は,上肢機能であった.以下,言語治療期間,言語治療開始までの発症経過期間,発話レベルの順位で相対的に強い影響を示した.
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