失語症研究
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原著
臨床的 「ヴィジランス」 検査の試み (II)
—脳損傷側の左右差,臨床症状との対応,及び遂行パターン差の検討—
坂爪 一幸平林 一遠藤 邦彦牧下 英夫
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1987 年 7 巻 4 号 p. 289-299

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抄録

    臨床的に簡便なヴィジランス検査として,等速打叩課題を考案し (坂爪ら, 1986) , 多数の脳損傷例に施行した (333例) .
    被験者に,健側に持った鉛筆で,机上を毎秒一回の速さで叩くように教示した.検者は,ストップウオッチをみながら,10秒問を1ブロックとして打叩音を計数し,計30ブロック (5分間) を記録した.本課題の指標として,30ブロックの平均打叩数 (反応傾向度) と SD (反応動揺度) を用いた.もしヴィジランスに障害があれば課題の遂行に動揺がみられるものと考えた.
    結果は以下のとおりであった.(1) 本課題に困難を示した者は,精神機能面になんらかの障害を伴っていた右脳損傷群で特に多かった (約80%,他の群では約50%弱) .(2) 概して精神症状を随伴すると困難を示し,特に左半側無視と精神症状を合併していると,本課題の遂行が困難な傾向が強かった.(3) 遂行障害のパターンには,出現率の高い特定の二型が観察された.一つは,「高傾向高動揺」 型で,もう一つは 「標準傾向高動揺」 型であった.
    以上の結果から,ヴィジランス機能は,脳損傷時に低下し易いが特に左脳損傷よりも右脳損傷の際に障害され易く,また本課題の遂行パターンは,「固着性」 と 「喚起性」 という基本的注意機能のバランスに依存していることが示唆されると思われた.

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© 1987 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会 (旧 日本失語症学会)
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