失語症研究
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原著
構音失行の純粋例で認められた構音器官の非言語的運動の障害について
遠藤 邦彦牧下 英夫谷崎 義生杉下 守弘柳沢 信夫
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1988 年 8 巻 3 号 p. 224-236

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抄録
    構音失行の純粋例3例, 麻痺性構音障害例4例, 健常者8名の構音器官の非言語的くり返し運動を比較した.どの症例にも口腔顔面失行はなかった.
    単純な非言語的くり返し運動の検査は, 構音器官の一つの部分の動き, すなわち, (1) 舌を前後に動かす, (2) 舌を左右に動かす, (3) 舌を上下に動かす, (4) 舌打ち, (5) 口唇を左右に引く, (6) 口唇を破裂させる, (7) 噛む, であった.複雑な非言語的くり返し運動の検査は, 構音器官一つ一つの部位の動きを組み合わせたもの, すなわち, (8) 口唇を破裂させてから舌打ち, (9) 口唇を破裂させてから噛む, (10) 舌打ちしてから噛む, であった.以上を5秒間で何回できるか検査した.
    単純なくり返し運動の検査では3群間に差はなかった.複雑なくり返し運動の検査では構音失行例は統計的に有意に速度が遅かった.
    構音失行例では構音器官の離れた部位の間 (例, 口唇と舌) の動きのタイミングを合わせる機能が障害されており, この非言語的段階の障害が非流暢な構音の一因になっているのではないかと考えられた.
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© 1988 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会 (旧 日本失語症学会)
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