抄録
本稿は、地域のリソースを活用して行った「まち歩き」が、留学生に与える影響を調査したものである。実施後のアンケートの結果、地域や文化・歴史への関心、成績への加点が参加の動機につながっていること、留学生が「まち歩き」を地域の情報を知る機会になると捉えたことがわかった。また、活動後に提出されたレポートをテキストマイニングで分析したところ、固有名詞や人名の出現頻度が高く、それらの言葉の使用例には「見えているものを、よく見る」(茶谷2012)ことから得られる詳細な記述が見られ、別府に対する印象が「何もないつまらない田舎の町」から「豊かな文化がある面白い町」へと変わったと述べているものも多かった。実施から半年後のインタビューでは、固有名詞の記憶は薄れているものの、「まち歩き」のルートやエピソード等はよく覚えており、「まち歩き」後の行動の広がりや意識の変化も確認できた。このことから、留学生を地域に誘い出し、地域を知り、愛着を生む機能としての「まち歩き」の有効性が示された。