APU言語研究論叢
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初級及び準中級中国語における助詞「了」の 教授法についての一提案 ― 準中級学習者の作文に見られた誤用の分析を中心に ―
羅 華
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2020 年 5 巻 p. 72-87

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抄録

助詞「了」の学習は、中国語の発音、文字及び基礎文法知識を中心に学習する入門段階 を経た後の初級段階で導入し、学習するが、学習者にとって習得が難しい文法項目の一つ である。その理由は主に以下の二点である。まず、「了」は文法的意味と統語構造に基づ き二つに分けられ、一つは動詞の後につける動態助詞注1(通称「了1」)で、動作の実現・ 完了を表す。もう一つは文末につける語気助詞(通称「了2」)で、状況の変化や新しい 事態の発生、もしくは話し手の事柄に対する確認の気持ちを表す。これらの基本文法的意 味に加え、「了1」と「了2」にそれぞれ細かい文法的意味があり、学習者にとって情報量 が多く、理解しにくい。  「了」をはじめて導入する段階においては、学習者に提示される例文が主に過去に発生  したことを表す文であるため、学習者に「了」は中国語の過去形マークだという誤った印 象を与えてしまう。その学習者の母語または第一外国語がテンスのある言語の場合、母語 による負の影響、つまり、負の転移が生じやすく、「了」を使うべきでない箇所に使い、 逆に使うべき場合に使わない現象が多く見られる。  本稿では中国語の初級段階を終え、準中級コースに入った学習者の作文から収集した 「了」の誤用例を分析し、その誤用に至る原因を突き止めることを試みた。また、「了」の 文法的意味を再整理し、効果的な教授法を提案する。

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© 2020 立命館アジア太平洋研究センター
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