APU言語研究論叢
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迷惑受身の発話の誤りに対するフィードバックついて
学習者は教師のリキャストを正しく理解しているのか
黒田 弘美
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ジャーナル オープンアクセス

2023 年 8 巻 1 号 p. 30-45

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抄録

本稿は迷惑受身の発話の誤りをリキャスト(訂正フィードバックの一つ)で訂正した場 合の学習者の気づきとその解釈を分析し、教師のリキャストが迷惑受身の運用につながる 可能性があるのか検討をした。その調査方法は、まず学習者にアニメの映像を見てもらい、 発話に誤用があった場合、リキャストを行なった。さらに、1週間後に会話の中での学習 者の思考過程を調べるため、刺激想起法による調査を行なった。その結果、学習者は教師 のリキャストに気づき正しい解釈ができている傾向があった。そして、迷惑受身の主語ま たは動詞の誤用にリキャストを行い、学習者がリキャストに気づいた場合は、迷惑受身の 運用につながる可能性があることが考えられた。学習者はリキャストに気づいた場合は、 文法規則が曖昧であることを自覚しているため、教師のリキャストに気づきやすい傾向が あった。このような場合は、リキャストをすることに効果があると考える。しかし、助詞 の誤用はリキャストする箇所が短すぎるため、気づきにくいことが考えられる。また、視 点の置き方の誤用はリキャストする箇所多いため、気づきがあっても、なぜ間違えている のか理解できない可能性があるので、迷惑受身の運用につながらないのではないかと考え る。

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© 2023 立命館アジア太平洋研究センター
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