2009 年 57 巻 1 号 p. 77-82
アコヤガイの高生残率系統を作出するため,閉殻力の遺伝性について検討し,閉殻力の遺伝率を親子の比較により推定した。材料には日本産アコヤガイ(18ヶ月齢)約5,500個を用いた。18ヶ月齢より 2 ヶ月おきに 3 回閉殻力を測定し,3 回の測定を通じて閉殻力が5.0 kgf 以上を維持した個体を強群,4.0 kgf 以下を維持した個体を弱群とした。これらを親として強群と弱群から,それぞれ雌雄一対の交配により 7 組,および対照群として 2 組の第一世代を得た。今回の閉殻力による選抜試験より得られた閉殻力の遺伝率は0.29であった。また第一世代の閉殻力を 3 群間で比較すると強群が最も強く,次いで対照群,弱群の順となり,親の閉殻力が反映された。このことから閉殻力は遺伝する形質であり,選抜育種による生残率の改善に有効である可能性が示された。