2011 年 59 巻 4 号 p. 541-549
ヤシガニはインド洋から太平洋の島々に分布し,大型で幼生期を除いて陸上生活するカニである。バヌアツにおいては重要な水産資源であり,人の住む島では過剰漁獲を抑えるため,最小漁獲サイズ,総漁獲量制限および抱卵メス保護の規制が実施されているが,小型化が問題となっている。ヤシガニは陸上生活に加え低成長・長寿命という生態学的特徴があり,小型化を持続させている可能性がある。ここでは,島内年齢構成モデルにより漁獲に伴う小型化とその持続性を定量的に評価した。生息地制限に伴う環境収容量と様々な漁業方式を設定して年齢構成をシミュレーションし,成長式により体長組成に変換して影響を調べ現規制において小型化が促進される状況を明らかにした。解析結果より現規制に加えて大型オス保護などの更なる対策を施すことによって一定期間後に小型化が解消されることが示唆された。