2015 年 63 巻 4 号 p. 399-408
マイクロサテライト DNA マーカーを用いて,日本産オニオコゼにおける天然集団と放流魚の遺伝的集団構造を解析した。天然集団として西日本の8地点および韓国からオニオコゼを採集した。また,岡山(備讃瀬戸)の天然4年級群および ALC 標識された放流再捕魚3年級群についても採集し,6種のマイクロサテライトマーカー座を用い,遺伝的多様性解析を行った。遺伝的多様性を示す有効アリル数の平均値は,天然オニオコゼと放流オニオコゼで同等の値を示した(7.5~9.5)。ヘテロ接合体率の平均値についても,天然オニオコゼと放流オニオコゼで同等の値を示した(0.723~0.767)。また,放流再捕魚と同海域の天然オニオコゼ間に顕著な遺伝的異質性はみられなかった。国内のオニオコゼ天然集団間の遺伝的距離は0.026~0.058と小さかった。岡山県の天然集団と放流再捕魚の遺伝的距離も0.029~0.076と小さかった。