水産増殖
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原著論文
南紀浦神湾の海産枝角類の夏季における消長
遠部 卓熊井 英水
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2019 年 67 巻 4 号 p. 319-332

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抄録

1976年7~9月に南紀浦神湾の海産枝角類の消長を高頻度の動物プランクトンの採集によって調べた。出現した3属4種の密度は,Penilia avirostris が最も高く,次いで Pseudevadne tergestinaPleopis polyphemoides,及び Pleopis schmacheri の順に低下した。個体群密度と表面水温の関係を示すパターンは種により異なり,種に固有の温度選択性をもつことが分かった。このパターンを他海域と比較した結果,各種ともその海域の温度特性に適応して異なることが明らかになった。Pleopis 2種に見られた生態的分離は,おそらく種間競争を回避する戦略であろう。有性生殖は Penilia avirostris においてのみ8月に検出されたが,休眠卵の生産に関わるメスの密度は,湾奥部(St. A)において最も高く,湾口部(Sts. B, C)に向かって次第に低下した。その傾向は,同年12月に同定点で記録された底生性休眠卵の分布密度によく対応した。最後に海産枝角類の有性生殖や食性をめぐる生態的諸問題について論議した。

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© 2019 日本水産増殖学会
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