2021 年 69 巻 4 号 p. 245-254
宮城県広瀬川を遡上するアユの体サイズ変異の要因を明らかにするために2016年5~6月に3定点においてアユを採集した。標準体長と体重の測定を行い,耳石と筋肉を採取した。耳石日周輪を計測し,筋肉から炭素・窒素安定同位体比(δ13C・δ15N)を解析した。また,5月19日に採集された計15個体について耳石 Sr:Ca を解析した。アユの体長は,ほぼ同一日齢の個体間で74 mm から139 mm の差異が確認された。アユ筋肉のδ15N は大部分が13‰以下であり,食物を動物プランクトンから河川の付着藻類へと切り替えていることが明らかとなった。δ13C は-28~-13‰で個体差が大きく,アユの体長との正の相関が確認された。耳石 Sr:Ca から,同一日齢個体の体サイズ変異は,淡水域で過ごした時間の長短が主な要因であることが示唆された。また,アユは体サイズが大きいほど生産力の高い藻類をより多く摂食し,体サイズ変異をさらに大きくすることが推測された。