水産増殖
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水質環境と魚類の成長―IV
注水量, 通気量が循環濾過水槽の水質とヨーロッパウナギの成長に及ぼす影響
千葉 健治
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1980 年 28 巻 1 号 p. 26-38

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抄録

1) 345×165×90cmのコンクリート水槽6面を用い, 2面は注水のみ, 4面は注水と循環濾過を併用し, 注水量を1~4l/min, 通気量を32~350l/minの範囲で変えて組み合わせた条件下でヨーロッパウナギ3.3kgを収容し, 6週間飼育を実施した。
2) 注水 (4l/min) のみで循環濾過を併用せず, 通気量の少ない (32l/min) 水槽で, 増重率, 餌料効率が他水槽より劣るのが認められた。他の水槽間に大きな差は認められなかった。
3) 飼育期間中, いずれの水槽でもpH, DOは次第に低下し, NH4-N, NO2-N, PO4-P, CODなどは増大した。注水量の少ない水槽程NH4-Nなどの増大は著しかった。但しNO2-N, PO4-Pは注水のみの水槽では増加しなかった。アルカリ度の変動はあるが, 増加又は減少の明確な傾向は認められなかった。その他Ca, Mg, Cl, SiO2などは大きくは変動しなかった。
4) DOには日周変動が認められ, 給餌後DOは低下し, 1.5~3時間後に最低を示し, その後徐々に回復した。その低下は通気量の少ない程大であった。
5) 濾過槽・注水によるNH4-Nの酸化, 希釈能力, 魚よりのNH4-N分泌排泄量の推定から, 飼育水中のNH4-Nの変動は残餌, 糞等の分解に由来するNH4-Nによって大きく影響される考えられた。
6) 増重率, 餌料効率の劣った注水のみの水槽ではNH4-N等の蓄積は認められず, むしろ飼育後期のDOが他水槽より低く50~60%であったことが, その成績の劣る主要な原因と推定された。

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