水産増殖
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アカガイの増殖に関する研究-II
食害生物特にヒトデの駆除効果について
高見 東洋井上 泰岩本 哲二中村 達夫吉岡 貞範
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1981 年 29 巻 1 号 p. 47-56

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抄録

1) 放流したアカガイをヒトデから保護するために, 下松市深浦地先の水深13mの海底にロープで10×10mの放流区画を3面, 2×5mの区画を1面作りヒトデの防除試験を行った。
2) ヒトデの防除方法は, 区画の外周り等にヒトデ・トラップを設置した区 (北区) , ヒトデ・トラップの他に高さ3mの網によるバリケードを設置した区 (中央区) , テント状に全面を網で覆った区 (西区) , 無防御区 (東区) およびかご養殖区である。
3) 1980年6月4日にアカガイの人工種苗 (平均殻長32.1mm, 8.5g) を1m2当たり20個の密度で放流し, 環境やヒトデの蝟集と食害状況, アカガイの歩留り等を定期的に潜水等で調査した。
4) ヒトデは, アカガイを放流するとほぼ一定方向から次第に蝟集し, ヒトデ・トラップによる捕獲量は, 4日連続した調査では1日目が最も多く, 2~3日目は少なくなり4日目には全く捕獲できなかった。一定間隔をおいて調査すると7月上旬をピークに漸増し, 9月に入って減少した。
5) ヒトデ・トラップを3m間隔で放流区画の外周をとりまき, 更に放流区画のロープ枠上に設置して捕獲することでヒトデの侵入をかなり防止できた。
6) 高さ3mの囲網は, 完全なヒトデの侵入防止にはならなかった。
7) ヒトデ・トラップに餌として投入したアサリが, 捕食される状況からヒトデの活動期をみると, 6~7月は特に捕食が活発であったが8月中旬からの捕食量は少なくなった。
8) 1~2日間といった短期間に引き上げるトラップの餌としては, 魚肉の成績がよく, 長期の場合は, アサリ生貝がよかった。
9) 蝟集量は, 1日最高106個体で6月4日~10月30日まで27回の調査による合計は, 1, 168個体となった。
10) アカガイの再捕率は, 148日目 (10月30日) で北区85%, 中央区125%, 西区95%および東区100%であり, ヒトデ・トラップの影響で, 無防御区の東区もヒトデの侵入がかなり防止された。

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