水産増殖
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ニホンウナギの人為的成熟の過程におけるL-アスコルビン酸とα-トコフェロールの魚体内での分布と移動
吉川 昌之
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1997 年 45 巻 4 号 p. 519-526

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抄録

人為的成熟過程におけるニホンウナギの魚体内でのL-アスコルビン酸 (AsA) とα-トコフェロール (Toc) の分布と移動について調べた (n=1) 。その結果, 成熟促進ホルモンとしてサケの脳下垂体 (20mg/尾/週) を与えた試験区においては, AsA, Tocともに, 成熟が進行するにつれて卵巣に分布する割合が増加し, 筋肉に分布する割合が減少して, 両ビタミンが筋肉から卵巣に移行していることが示された。ただし, AsAの筋肉から卵巣に移行した割合に比べると, Tocのその割合は低く, TocはAsAに比べると魚体内を移動しにくいものと推測された。一方, 生理食塩水を与えた対照区においても, 相対的に卵巣に多量のAsAが分布しており, 卵巣にはもともとAsAが多く分布するらしいことが示された。しかし, Tocの卵巣における分布はきわめて少なく, 大半が筋肉に分布していた。試験期間の後半になり, 対照区の筋肉におけるAsAの分布の割合が若干減少したが, これは無給餌, あるいはストレスによるものと推測された。一方, Tocにはそうした現象はみられなかった。

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© 日本水産増殖学会
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