1997 年 45 巻 4 号 p. 527-532
各種微細藻類 (Chaetoceros gracilis, Chaetoceros calcitrans, Pavlova lutheri, Nannochloropsis oculata) のマガキ幼生に対する餌料価値を検討した。各藻類を単独給餌したマガキ幼生の成長・生残は, C.gracilis, C. calcitransおよびP.lutheyiを給餌したもので良好であった。一方, N. oculataはマガキ幼生の餌料に適していなかった。各藻類の細胞成分を分析した結果, 蛋白質含量に大きな差はなかった。また, 炭水化物含量は, C. gracilisでやや低かったものの各藻類に大きな差はなかった。脂質含量は, P. lutheriとN.oculataで高く, 乾燥重量当たり各々29.4%, 27.6%であった。全脂肪酸に対するエイコサペンタエン酸 (EPA) 含量は, P. lutheriと N. oculataで高く, 各々26.5%, 32.2%であった。一方, ドコサヘキサエン酸 (DHA) は, P. lutheyiで含量が高く, N. oculataでは認められなかった。本試験で, マガキ幼生に対する餌料価値が最も高かったのはC. gyacilisで, 次いでP. lutheri, C. calcityans, N. oculataの順であった。これらの結果から, 各藻類の細胞成分, とくに炭水化物と脂質の各含量と, マガキ幼生の成長・生残率との関連は認められなかった。しかし, 餌料藻類のDHA含量が, マガキ幼生の成長・生残に影響を及ぼす制限因子であることが推察された。