水産増殖
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ワムシの高密度間引き培養におけるアンモニアと懸濁物およびワムシ現存量の変化
吉村 研治臼杵 考志吉松 隆夫田中 賢二石崎 文彬上村 英樹
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1998 年 46 巻 2 号 p. 183-192

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抄録

ワムシの高密度間引き培養を行い, 培養系内のアンモニア (NH4-N) , 懸濁物濃度およびワムシの現存量の変化について調べ, 高密度培養の管理に必要な基礎的な知見を得ることを主目的とした。
培養系内のNH4-N濃度An (ppm) は, 見かけ上のクロレラの累積給餌量Rn (g, 乾燥重量) とNH4-N生成量Yn (g) から下式でモデル化された。
An=a・ (1-T) n+Yn/V
ただし, n; 培養日数, T; 間引き率, S; クロレラ給餌量 (g, 乾燥重量) , a; 培養初日のNH4-N濃度 (ppm) , V; 培養水量 (kl)
培養日数, ワムシ層, 老廃物層および微生物層の各項目間の無相関の検定結果から, ワムシの増殖が物理化学 (無機) 的環境要因ばかりでなく, 生物 (有機) 的環境要因やワムシの内的要因 (個体群の動態) の影響を受けていること, ワムシが老廃物層を栄養物質とするが微生物層を栄養物質としないことが示された。
PVは, 塩分 (浸透圧) , 懸濁物, 卵率などによって測定誤差を生じ易い欠点があるが, それらの誤差要因に配慮することで正確・迅速にワムシの現存量 (生物体量) を推定できた。さらに, PVは培養水中のワムシの栄養物質に関する情報もモニターでき, 種苗生産現場でのオンラインでの培養管理に適すると考えられる。
ワムシ1個体当たりの平均乾燥重量とPVはそれぞれ1.6×10-7gと8.2×10-7ml, 卵1個当たりの平均乾燥重量とPVはそれぞれ0.9×10-7gと4.9×10-7mlであった。

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