水産増殖
Online ISSN : 2185-0194
Print ISSN : 0371-4217
ISSN-L : 0371-4217
殺菌作用を有する電解水3種の物理化学的性質と保存性
柏木 正章佐藤 亜紀子坂東 英太郎吉岡 基上野 隆二中村 雅昭出野 裕
著者情報
ジャーナル フリー

2000 年 48 巻 3 号 p. 559-564

詳細
抄録

水道水に少量の食塩を添加して電気分解する電解水は強い殺菌効果を有するが,これはpHの違いによって強酸性水,弱酸性水および弱アルカリ性水の3種類に分けられる。本研究は電解水の殺菌・消毒力を水産増殖分野に利用することを最終の目的としているが,本報では,我々が今後利用する種類を決めるため,電解水3種における一般細菌に対する殺菌効果,pH,酸化還元電位,残留塩素量および溶存酸素量を測定し,これらの性質と電解水の保存条件との関係を比較した。
電解水は無隔膜式の電解装置を用いて作製した。強酸性水,弱酸性水および弱アルカリ性水のpHはそれぞれ2.4,5.6および8.2であった。作製した電解水は20℃と5℃において密栓して暗所に60日間保存した。電解水の殺菌効果については,一般細菌試験紙を用いて評価した。
作製直後の電解水の一般細菌生残率はいずれも0%で,強い殺菌効果が認められた。保存期間中の殺菌効果は,弱アルカリ性水において最も良好に保持され,殺菌効果の主成分とされる残留塩素濃度も最も減少が少ない傾向にあった。それ以外の物理化学的性質も考慮すると,今後,使用する電解水としては弱アルカリ性水が最も望ましいと結論した。

著者関連情報
© 日本水産増殖学会
前の記事 次の記事
feedback
Top