2004 年 52 巻 3 号 p. 251-258
高知県浦ノ内湾及び沖ノ島周辺で採集されたマガキガイの捕食者防御行動について室内実験をおこなった。本種は成長に伴い貝殻外唇部が肥厚するので, 外唇部が厚さと防御行動の関係に着目した。ほぼ同一サイズの個体を用いた室内実験の結果, 捕食者であるソメンヤドカリは外唇部の薄い個体を選択的に捕食したが, 外唇部の肥厚によって捕食者防御行動に対する明瞭な影響は認められなかった。また, 本種の行動に対する同一水槽内のソメンヤドカリの影響は認められなかった。ソメンヤドカリに捕らえられたマガキガイは多量の粘液を分泌したが, 粘液の有無による本種の行動においても有意な違いは認められなかった。一方, つぶしたマガキガイが入った水槽では, コントロール条件に比べて本種が有意に早く完全埋没 (自分の貝殻が底質表面から見えなくなるまで潜砂した状態) に至った。