2009 年 11 巻 p. 92-111
文学研究は何に基づいておこなわれるのか。本か、テクストか。この問いは、書籍のデジタル化が急速に進行するなか、文学研究の領域できわめて大きな意味を持ち始めている。編集文献学は、すでにここ数年、この問いに向かい合ううち、書物の物質性の<再現>をめぐって深刻なジレンマに陥っている。このジレンマは編集文献学を、いずれはアーカイブズ学と呼びうる領域へと徐々に引き寄せていくことだろう。本稿は、人文学系の研究資料に関して最重要といえる「オリジナル」の概念をめぐって考察を深めながら、文学研究資料をめぐる未来の学問動向について、予見的に語るものである。