抄録
昨年の本大会では、LC/FT-ICR-MSによるトマト果実の網羅的な分析について報告し、多くの未知代謝物の存在を示唆した。本研究は植物の代謝物データベース作成を目標としているが、未知代謝物に対してより多くの化学構造的情報(組成式、MS/MSイオン、文献検索による推定構造など)をアノテーションとして付することは成分同定への手がかりになるだけでなく、大量データの一斉解析に用いることを可能にし、代謝流動の解明に役立つことが期待できる。今回は、このような未知代謝物についてLC/FT-ICR-MSを用いた我々のアノテーション手法について紹介し、解析データから得られる知見について報告する。成熟段階の異なるトマト(Micro-Tom)果実を組織別(果皮と果肉)に抽出し、LC/FT-ICR-MS分析を行った。検出された各MS値については内部標準補正法により精密質量を求めた。また、ノイズ除去を行い、精密質量値と13C同位体強度比から組成式候補を導きだす方法を確立した。この手法により、全体で330以上成分に対するアノテーションを可能にした。さらに、これらのデータを活用することにより、フラボノイド類などでトマト特有の未知代謝経路の推定に応用できることが示唆された。