2019 年 30 巻 p. 4-35
本稿では、「奪われた世代」問題を事例として、フランク・アップワードによって提示されたレコード・コンティニュアム理論の一解釈を試みる。コンティニュアム理論はオーストラリアのレコードキーピングの伝統から生み出されてきた。しかし、公的アーカイブズ機関等が保有する記録に対するアボリジナルの人びとの「私の記録は誰のものか」という問いは、一組織母体の機能と活動を反映した単一の視点からのレコードキーピング活動の再考を迫るものであった。この問いを契機とした「和解」の試みの一つである「信頼と技術」プロジェクトをコンティニュアム・モデルの多元化という観点から検討する。そして、この「和解」の経験を一般化するものとして参加型レコードキーピング・コンティニュアム・モデルを採り上げ、その意義と課題を考察する。