年報カルチュラル・スタディーズ
Online ISSN : 2434-6268
Print ISSN : 2187-9222
投稿論文
路上の身体と空間、その関係について
ストリートバスケットボールのエスノグラフィから
松本 淳也
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2025 年 13 巻 p. 65-90

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抄録
本稿は神戸市中央区「みなとのもり公園」におけるストリートバスケットボール実践を対象としたエスノグラフィ研究である。
ストリートをめぐるこれまでの研究は、この空間を多種多様な人々が出会い折衝する場として考察してきた。そこでは従来の枠組みにはとらわれない創発的な政治的実践が生まれているとされ、特にその公共的性質や非言語的性質が指摘されてきた。一方で、既存のストリート研究における記述の不十分さも指摘されており、ミクロな調査に基づく詳細な研究が期待されている。この問題は既存のバスケットボール研究にも通底しており、文化本質主義的な分析を越えて具体的な身体の運動に立ち返り、その社会性を記述することが求められている。
こうした状況を踏まえ、本稿では身体と空間に着目したストリートバスケットボール実践の記述と分析を試みる。特に、屋外の公園で行われるストリートバスケットボールと体育館で行われる制度的なバスケットボールとの対比を重視し、前者に独特な公共性と非言語的な政治性を明らかにする。
明確なルールもなければ、審判も監督もいないストリートコートは、誰でもアクセスできる開放性によって基礎づけられ、その空間は一種の公共圏として機能している。また、そこでの身体は勝利や経済的利潤といった行為の結果として得られる目的のための手段とはならず、行為の過程自体に属する楽しみや一体感に重点が置かれている。特に、コートを共有する不特定多数が一体となって「流れ」を生み出そうとするピックアップゲームでは、身体と空間との相補的な関係―空間的身体―が実現されている。
本稿ではストリートバスケットボールにみられるこうした実態を、近代社会において抽象化された空間、および断片化された身体をつなぎ直し、身体と空間の主体性を再建する非言語的な政治性の発露として論じる。
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