教育心理学年報
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I わが国の最近1年間における教育心理学の研究動向と展望
臨床心理学研究の動向と課題
—育つこと・育てることの困難という観点から—
香川 克
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2014 年 53 巻 p. 83-95

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抄録

 本稿では,2012年7月から2013年6月までの1年間に発表された臨床心理学に関する研究の中から,児童期・青年期を対象としたものを選んで概観した。その結果,「心理療法・カウンセリングの深化」「不登校・ひきこもりへの支援」「発達障害への心理療法」「女性の“傷つき”と行動化への心理療法」「児童養護施設における心理療法」「スクール・カウンセリング」「学生相談」「親への援助」「留学生・外国人への援助」「投映法研究」「児童・思春期の適応」「青年期の適応と発達」などのカテゴリーが見られた。母親になっていく年代の女性の外傷体験や,母親自身の抱える心理的なテーマへの支援の必要性が取り上げた研究があり,さらに,社会的養護をめぐる論文も多く,子どもたちが育つ環境を整えることが難しくなっていることがうかがわれた。このような研究動向の背景に,社会経済的な状況の困難の影響が考えられる。発達障害や不登校をめぐる研究も,子育ての困難さと関連している場合が少なくなかった。このように,育つことや育てることが難しくなっている状況の中で,子どもたちに関わる幅広い立場からの協働作業が求められていることを論じた。

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© 2014 日本教育心理学会
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