本稿は,この数年の間に発表された,日本教育心理学会における教授・学習・認知領域における研究を概観し,この分野における成果を紹介した。本稿の対象としたのは2018年7月から2019年6月末までに『教育心理学研究』に掲載された論文及び,2019年9月に日本大学で開催された日本教育心理学会第61回総会で発表された内容である。本稿では,『教育心理学研究』に掲載された研究と,総会で発表された研究を分けて紹介し,学会誌におけるトレンドと学会発表のトレンドが明らかになるように構成した。また,「探究的な学習」に関する理論やエビデンスとしてどのような研究があるかを検討した。その結果,「探究的な学習」に関する研究があまり多く行われていないことが明らかになった。そのため,最終節では,特に「疑問生成」にフォーカスして,教育心理学の「探究的な学習」への展開可能性について述べた。