1985 年 34 巻 1 号 p. 15-22
気管支喘息患者より得られた生検気管支組織の基底膜におけるフィブリン沈着を免疫組織学的に観察し, フィブリン沈着と喘息の重症度, 気管支拡張剤による呼吸機能の改善度および気道過敏性との関係についてそれぞれ比較検討した.その結果, 中等症以上では75%にフィブリン沈着がみられ, 軽症群(33%)に比して陽性率が高かった.さらに, テオフィリン投与後の血中テオフィリン濃度はフィブリン沈着陽性群, 陰性群とも経時的に上昇したにもかかわらず, テオフィリン投与による1秒量の改善率とメサコリン吸入後の気道収縮に対するメタプロテレールによる1秒量の改善率をみると, それぞれ, フィブリン沈着陽性群は陰性群に比して改善率が有意に低かった.また, メサコリン吸入DminおよびCminとフィブリン沈着との間には関係はなかった.以上より, 基底膜のフィブリン沈着は, 気管支喘息の難治化の要因の1つであることが示唆された.