アレルギー
Online ISSN : 1347-7935
Print ISSN : 0021-4884
ISSN-L : 0021-4884
硫酸マグネシウムの経静脈投与が奏効したと考えられるChronic Fatigue Syndromeの1例
高橋 裕樹今井 浩三潟沼 朗生菅谷 寿晃久野 和成本谷 聡青木 繁雄杉山 敏郎谷内 昭
著者情報
ジャーナル フリー

1992 年 41 巻 11 号 p. 1605-1610

詳細
抄録

長期間持続する全身倦怠感・微熱・リンパ節腫脹とともに筋肉痛・関節痛を有し, アトピー素因をもつchronic fatigue syndromeの1例を経験した. 症例は29歳, 女性で5年前よりアトピー性皮膚炎にて加療をうけていた. 平成2年5月頃より倦怠感出現し, 同年12月には微熱, リンパ節腫脹とともに抗核抗体高値 (2520倍) を指摘され, 平成3年5月当科入院となった. 各種検索の結果, 膠原病は否定的であり, 慢性疲労・微熱・リンパ節腫脹に加え, 頭痛・筋肉痛・筋力低下・関節痛・睡眠障害などが認められ, Holmesらの診断基準に従い, chronic fatigue syndromeと診断した. アトピー素因に一致する好酸球増加・IgE増加・RASTスコアの上昇と, NK細胞活性・ADCC活性の低下, 末梢血中のNK細胞の減少を認めたが, ウイルス抗体価は検索した範囲内では正常域であり, また血中サイトカインにも変化はみられなかった. 治療として対症的に用いた非ステロイド消炎鎮痛剤やマイナートランキライザー, 抗うつ剤は無効であった. 全身倦怠感の改善目的に週1回, 硫酸マグネシウムの点滴静注を行ったところ, 投与開始6週目頃より易疲労感の軽減, 活動性の向上が認められるようになり, 平成4年1月退院し, 現在外来にて通院加療中である. 硫酸マグネシウムは, 過剰投与さえ注意すれば重篤な副作用はなく, 治療法のひとつとして有用であると考えられた.

著者関連情報
© 1992 日本アレルギー学会
前の記事 次の記事
feedback
Top