抄録
【背景】スギ花粉とヒノキ花粉が共通抗原を持つことは良く知られているが,スギ花粉症患者でのヒノキ花粉症合併の有無とその意義については明らかになっていない.【方法】スギ花粉とヒノキ花粉との飛散の重複がほとんど認められなかった2006年にスギ花粉症患者を対象にスギ花粉エキスを用いた舌下免疫治療のランダム化比較試験から,ヒノキ花粉飛散期の臨床症状の検討を行った.また,スギ花粉症患者のヒノキ抗体の季節変動についても検討を行った.【結果】スギ花粉エキスを用いた免疫治療はヒノキ花粉症に対する効果は明らかではなかった.また,ヒノキ花粉抗体は測定時期により影響を受けていた.【結論】ヒノキ花粉飛散がみられる時期の治療の評価はヒノキ花粉症の合併の有無で異なり,スギ花粉症患者を区別して検討していくことが必要である.また,スギ花粉エキスを用いた舌下免疫治療はヒノキ花粉症に対して効果は少ない.今後,ヒノキ花粉症に対する詳細な検討が望まれる.