2017 年 66 巻 9 号 p. 1181-1184
症例は26歳,女性.幼少期より,鶏卵の誤食による誘発症状を認めていた.治療の希望があり,急速経口免疫療法の目的で当院に入院した.二重盲検負荷試験で陽性を確認し,オープン法による閾値決めを行った.生卵白乾燥粉末を症状誘発閾値の1/10量(3.0mg)より1.2倍ずつ増量し,5回/日で摂取した.1gに達したところでスクランブルエッグ8gに変更し,その後は1.5倍ずつ増量した.治療18日目に目標の鶏卵1個分(60g)に達した.治療中に蕁麻疹や軽い呼吸困難などの誘発症状を2回認めたが,抗ヒスタミン薬を内服して症状は消失した.鶏卵摂取後の運動誘発試験は陰性,鶏卵入りの加工品を摂取しても誘発症状は認めなかった.現在,1日に鶏卵1個を摂取する維持療法を継続中であり,2年の経過で誘発症状を認めていない.小児期に耐性獲得できない成人に対しての急速経口免疫療法は,選択肢として考慮される治療法である.