2021 年 70 巻 3 号 p. 195-203
【背景】我々は,嘔吐後の血清thymus and activation-regulated chemokine(TARC)値が固形食物によるFood protein-induced enterocolitis syndrome(FPIES)の診断における有用なバイオマーカーである可能性を報告した.しかし,FPIESの重症度と血清TARC値の関係についての報告はない.
【方法】対象はFPIES 13例(鶏卵10,小麦1,米1,アサリ1)による計22エピソード(救急外来受診7件,経口負荷試験陽性9件,陰性6件)で,抗原摂取6時間後と24時間後の血清TARC値について後方視的に評価し,有症状と無症状の2群間,軽症―中等症と重症の2群間で比較した.また,嘔吐持続時間と血清TARC値の相関を評価した.
【結果】無症状,軽症―中等症,重症の3群における血清TARC(pg/ml)の中央値は,摂取6時間後では546,1093,3127,摂取24時間後では910,2053,6496で,有症状が無症状よりも有意に高値で,重症は軽症―中等症よりも有意に高値だった(p<0.01).血清TARC値と嘔吐持続時間は中程度の相関を認めた.
【結語】FPIESの重症度と嘔吐後の血清TARC値は有意な相関がみられた.FPIESの客観的な病勢評価について,血清TARC値の活用が期待される.