農林業問題研究
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個別報告論文
ラオス南部農村地域における小規模灌漑の経済評価
ヴォンサナ コサダ
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2014 年 49 巻 4 号 p. 530-535

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抄録

池は小さな貯水設備であり,農家は雨季には雨水を貯め乾季には灌漑を補う.ラオスでは広く貯水のために池が用いられてきたが,近年農家によって農場に個人利用の池を造る事が増え,政府はその投資効果に関心を寄せている.本稿では,2012年にラオス南部の2県で行った池の調査に基づき,大・中・小に分類された池の経済性を調べた.池を造るコストと池から得られる農家への利益を比較し,池の費用便益分析を行った.ネットプレゼントバリュー(NPV)で,将来,池から生じる価値とコストの割引現在価値の合計を比較した.すべての池が正のNPVを持ち,便益費用比率で1以上であった.家族労働の帰属費用まで含めると,小・中の池で投資が正当化された.この地方では,小・中の池が大きな池に比べてより多くの経済的所得をもたらす.大きな池はコミュニティレベルで経済的に見合うものの,貧しい農家にとってその投資は厳しい制約となっている.

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© 2014 地域農林経済学会
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