2015 年 51 巻 2 号 p. 128-133
獣害の軽減に費やされる予算は年々増加傾向にあるが,被害額は横ばいで(総務省,2012),獣害問題の解決は農山村地域にとって重要な課題となっている.被害軽減には,誘引除去と予防と捕獲を組み合わせることが重要とされ(農林水産省,2014),複合的な取組みが各自治体単位で進められている.
予防については,防護柵や電気柵などの設置による物理的な方法と,人が野生動物を追い払う人的な方法がある.誘引除去には,野生生物の餌となるものを管理・除去する方法がある.これらすべての取組みについては,農家が戸別におこなうのではなく,集落単位で進めることで成果があがるとされ,特にニホンザル(以下,サル)の被害(猿害)には集落ぐるみの追払いを徹底することで効果が高くなることが明らかになっている.しかしながら,誘引除去対策を集落で徹底させるための仕組みは未整備なままである.
誘引除去対策が進んでいない放棄果樹に,かつて食用のために植樹されていた柿などがある.しかしながら,集落で自主的に放棄果樹を管理している事例は多くなく,「柿取り隊」(山梨県富士吉田市)や「獣害レンジャー」(兵庫県但馬地区)といった形で,都市住民を巻き込んでおこなう事例がいくつか見られるのみである.後者の「獣害レンジャー」として地域に入った都市住民については,獣害に対する理解が深まるだけでなく,獣害対策以外のボランティアにも興味をもつことが確認されており(市川ら,2012),都市住民を獣害対策のプレイヤーとして位置づける可能性が示唆されている.
一方,捕獲によって殺処分された野生生物の廃棄にかかる費用が莫大で捕獲が進まない現状を鑑み,捕獲した個体を資源として利用することで,捕獲を推進させる取組も始まっている.イノシシ,シカは食肉として利用され(四方ら,2008;横山ら,2013),島根県美郷町は,イノシシの資源化によって,地域を活性化している事例で有名である.サルは,食肉としての需要がないため,捕獲個体が活用されている事例はみられない.サルは,猿回しなどの文化を生み出してきた日本人にとって身近な動物であるが,イノシシやシカと違い資源化することが難しい.そこで,柿の管理という猿害対策を,役務でなく,一つの地域資源として位置づけ,イベント化することで,対策の持続性を確保するとともに,地域の発展につなげることを目指した.
(2) 研究のフレームと対象地本研究では,サルを誘引している放棄柿を,地域外住民とともに除去するイベントを社会実験的に企画実施し,参加者や地域住民の双方の評価分析をとおして,効果と課題を明らかにし,参加型猿害対策手法としての可能性と課題を考察することを目的とした.具体的には,都市住民を対象とした放棄柿の早期収穫イベントを地域住民とともに企画実施した上で,(1)地域外からの参加者(外部参加者)の参加動機や評価,さらに事業を通じて獣害対策や猿害に対する意識がどのように変化したかを分析した.(2)次に,実施主体を含む地域住民についても同様に,実施の動機や取り組みに対する評価を分析するとともに,サルや柿の管理や利用,地域内外の人的交流に関する意識がどのように変化したか,についても分析した.(3)以上の結果より,猿害対策を資源とするイベント化が猿害対策の維持強化と地域社会に及ぼす影響を構造として整理し,住民参加型の猿害対策事業としての持続性と可能性について考察することとした.
(3) 研究のフレームと対象地調査は,兵庫県篠山市畑地区を対象とし,2013年4月~2014年9月末までおこなった.畑地区は,篠山市の中央部の北東4 kmに位置し,人口は1,092人,世帯数は415戸,高齢化率は37.70%の農村地域である(2010年10月).兵庫県には野生のサルの群れが11群存在するが,篠山市にはそのうち5群が存在する.畑地区には,サルの群れが2群出没するため,猿害が顕著な地域で,サルの存在に対して否定的な意見が多く聞かれる.そのため,畑地区は,篠山市内のなかでも被害軽減のための取組みが積極的に導入されてきた地域である.
また,畑地区は,篠山市と神戸大学とが地域連携事業としておこなっている実習も受入れている.本研究で対象とした放棄柿の収穫イベント「さる×はた合戦」は,学生らが畑地区の課題を抽出した結果をもとに,その課題解決の一助となることを目指し実習(実践農学)の一環で企画されたものである.
著者らは企画者として放棄果樹の早期収穫社会実験事業に関わり,参与観察をとおして事業運営のプロセスを明らかにした.放棄柿の収穫イベントは,2013年11月の休日に実施し,午前は76名,午後は56名,のべ132名(うち,午前午後重複は17名)が参加した.外部参加者の事業への参加動機や意識変化は,事業当日におこなったアンケートを用いて明らかにし,外部参加者115名のうち85名から回答を得た(73.9%).また,地域住民に対する意識調査は,2014年9月~10月にかけて配布したアンケートを用いて明らかにした.本事業で柿の樹を提供した4つの集落に各戸2部ずつアンケートを配布し(合計380通),合計109通回収した(回収率28.7%).そのうち,有効回答は76名であった.
| 項目 | 内訳 |
|---|---|
| 外部参加者の交通費(大型バス借用) | 68,934 |
| 教員・学生の交通費 | 111,880 |
| 事業フライヤー印刷費 | 5,230 |
| 事業成果ポスター印刷費 | 21,500 |
| 文房具等 | 16,072 |
| 景品 | 9,000 |
| 計 | 232,571 |
事業実施までには,みたけの里づくり協議会(以下,里協)と,その役員(会長・副会長,役員),自治会長会,元里協役員,神戸大学篠山フィールドステーション研究員,神戸大学実践農学履修者で構成される「さる×はた合戦実行委員会」と,役員と神戸大学の窓口のみで調整する「ワーキンググル―プ」の2種類の会合が開かれた.実行委員会は4回,ワーキンググループは2回開催された.大学からの教育研究費とみたけの里づくり協議会費を原資として,事業をおこなった(表1).事業経費は約23万円であったが,外部参加者の交通費と,事業実施にかかる会議参加または準備に地域を訪問した学生スタッフおよび教員の交通費で,総支出額の75%以上を占めた.そのほかは,事業告知のちらしや,事業の成果をまとめたポスターの印刷,参加者の名札などであった.
当日の収穫イベントは,午前午後の2回に分けておこない,どちらも,開会式,柿取り,表彰式のプログラムで構成された.参加者は,班に分かれて,地域住民とともに収穫する柿の樹まで移動し,竹や高枝伐りはさみなどを用いて柿を取り,2回合わせて約1.2トンの柿を収穫した.収穫した柿は,参加者が持ち帰ったほか,社会福祉協議会を通じて老人ホームに提供された.当日の事業スタッフは学生と地域住民合わせて33名であったが,それらの人件費は事業経費に含まれていない.
大阪市や神戸市などの市外からの参加は72名(84.7%),市内の参加は7名(8.2%)であった.属性は,学生がもっとも多く57名(67.0%)で,次いで多かったのは勤め人・自営業の16名(18.8%)で,外部からの参加で農家と回答した方はなかった.学生が多いことが影響し,参加者の年齢は10代がもっとも多く62名(72.9%)で40代~60代は13名(15.3%)であった.日頃柿を食べるかどうかについては,参加者の65.9%(56名)が「柿を食べる」と回答しており,干し柿については41.2%(35名)が「食べる」と回答していた.このことから,柿を日常的に食べている方が,本事業への参加者の半分を占めていたことがわかる.
なお,上述の学生たちは,実習の一環で参加したのではなく,実習関連の学生の口コミや学内での広報を通じて集まっており,一般の方々と同じ立場で参加している.よって,参加動機に関する分析は,学生とその他を合わせておこなう.
(2) 参加動機と満足度外部参加者の事業への参加動機について複数回答で尋ねたところ,「柿取りがしたい」(21.7%)と「人の誘い」(21.7%)がもっとも多く,次いで,「柿がほしい」(15.0%)であった(図1).その次に多かったのは「参加者・農家との交流」(12.6%)であった.このことから,「人の誘い」を受けながらも,柿とりそのものや柿を目当てでこの事業に参加していることがわかる.

外部参加者の事業参加動機(複数回答,N=254)
事業の満足度について尋ねたところ,85名のうち83名が非常に満足または満足と回答しており,満足度は非常に高い.継続参加の意向については,「参加したい」と回答した人は72.9%(62名)をしめ,かなりの継続参加が見込める.また,参加してよかった理由を自由記述で尋ねたところ,「果物が取れる.獣害対策となる.取る楽しみがある.」や「交流が深まり,ボランティアにもなる」「win-winの関係が成り立っている」といったことが挙げられていた.事業に払ってもよい金額については,500円と回答した人がもっとも多く(40.0%,34名),ついで多かったのが1,000円であった(17.6%,15名).回答なしの13名を除くと91.7%(72名)の回答が500~1,000円範囲内であった.
(3) 獣害や猿害に対する意識とその変化参加者の獣害・猿害への認知について尋ねたところ,獣害について「よく知っていた」または「知っている」と回答した人の割合は58.8%(50名)と半分強を占め,「聞いたことはある」を含めると87.1%にのぼり,ほとんどの人が知っている状態での参加だったことがわかる.猿害の認知も獣害と同様な傾向をみせたが,知っているとまではいえないまでも聞いたことがあると回答した人が,獣害に比べて多かった(獣害:28.2%,24名,猿害:40.0%,34名).
獣害への興味関心が高まったかという質問では,参加者の89.4%(76名)が,「非常に高まった」または「少し高まった」と回答しており,事業に参加した結果,参加者の獣害への興味関心が高まることがわかった.
受入地域側へのアンケート調査において回答を得た76名について,まず,事業参加の実態について尋ね,「企画運営」,「事業協力」,「柿の提供」「地区住民」のいずれかに該当しているのは33名(43.4%)で,直接事業に関わっていないが地区住民であると回答したのは43名(56.6%)であった.うち事業当日に現場にいたのは,19名であった.
当日の参加者は19名,非参加者は57名で,そのうちとても被害を受けている人の割合は参加者68.4%,非参加者75.4%であった.対策を日常的におこなっている人の割合は,参加者では57.9%,非参加者では55.3%で,週末や休日に時々と回答した人の割合は,参加者で21.0%,非参加者で19.6%とほぼ同程度であった.つまり,被害が深刻でも本事業に参加していない地域住民もいることがわかる.また,5名に1名は,日常的な対策に従事していないことがわかる.
(2) 受入動機と満足度地域住民にイベントに参加した動機について尋ねた(複数回答).「柿を消費するため」が43.2%ともっとも多く,「サルの被害を減らすため」がついで24.3%で,「おもしろそうだから」は18.9%,「都市住民との交流」は13.5%であった.
当日の事業参加有無に関わらず,事業に求めることについて尋ねた結果(図2),「地区内でのサル対策への関心づけ」がもっとも多く(32.4%),ついで,「放置柿の徹底した取り除き」と回答した人が多かった(28.9%).このことから,地域住民の本事業への期待は,地域内での意識共有と,地域外の方の支援による餌資源の徹底した排除の2点によせられていることがわかる.事業に対する満足度は,参加者では半分程度(47.4%),非参加者では73.7%が,どちらでもないと回答している.継続したほうがよいかという質問については,参加者も,非参加者も57.9%の割合で継続したほうがよいと回答しており,効果や,事業への満足度は異なるものの,地域としては半分程度が継続したほうがよいと考えていることがわかる.事業が猿害に効果があったかどうかという質問では,参加者の方が,非参加者よりも,とても効果を感じるまたは,なんとなく感じると回答した割合が高い(参加:52.6%,非参加:42.1%).非参加者は,参加者よりもほとんど感じないと回答した人の割合が高く(参加者:10.5%,非参加者:33.3%),参加するか否かで柿の排除効果に関する考え方が異なることが明らかになった.

地域住民の事業の受入れ動機(複数回答,N=173)
| 非常にそう思う | そう思う | そう思わない | 計 (%) |
||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 以前 | 以後 | 以前 | 以後 | 以前 | 以後 | ||
| サル排除 | 65.8 | 1.3 | 21.1 | 7.9 | 3.9 | 0.0 | 100 |
| サル利用 | 15.8 | 6.6 | 32.9 | 27.6 | 15.8 | 1.3 | 100 |
| 柿の伐採 | 11.8 | 3.9 | 30.3 | 18.4 | 32.9 | 2.6 | 100 |
| 柿の利用 | 15.8 | 3.9 | 36.8 | 27.6 | 14.5 | 1.3 | 100 |
1)N=72.“以前”は事業実施前からそう思う,“以後”は事業実施後からそう思うようになったという回答を指している.
次に,事業を実施した後のサルや柿に対する考え方を明らかにした.具体的には,「サルの排除・防除にもっと取り組むべき(サルの排除)」,「サルを排除・防除するだけなく,地域づくりや何かに利用していくべき(サルの利用)」,「地区内の柿を,もっと伐採していくべき(柿の伐採)」,「地区内の柿を,もっと管理して,地域づくりや何かに利用するべきだ(柿の利用)」,「地区外の人々との様々な交流をすべきだ(内外の交流)」,「地区内の人々との関わりを強化すべきだ(内部との交流)」について,それぞれ,前から非常にそう思う,前からそう思う,前からそう思わない,非常にそう思うようになった,そう思うようになった,そう思わないようになった,の6つから1つを選択するよう求めた.事業の参加非参加によって大きな違いがみられなかったため,参加の有無によって分けずに分析した(表2).
サルの排除については,前から非常にそう思うと回答している割合が65.8%と全体でも最も高い.ただし,前からそう思わないという回答も3.9%みられた.前からサルを利用すべきだと思っていた人の割合は32.9%で,排除すべきだと前から思っていたと割合(21.1%)に比べて高い.さらに,サルを利用すべきだと思うようになった人の割合(27.6%)は,排除すべきと思うようになった割合(7.9%)と比較して高い.
柿については,前から伐採すべきでないと回答している割合(32.9%)は,前から伐採すべきであると回答している割合(30.3%)とほぼ同程度である.ただし,事業後に,柿を伐採すべきだと思うと回答していた割合(18.4%)よりも,柿を利用すべきと思うようになったと回答している人の割合(27.6%)が高いことから,本事業を通じて柿の利用意識が高まったと考えられる.以上の結果より,サルや柿を利用しようとする意識が,地域内で高まっていることがわかった.
次に,事業を実施した後の人材交流についての考え方を聞いた(表3).地域内外との交流については,前からそう思う,そう思うようになったと回答した人の割合40.8%と全体のなかでも最もが高く,そう思わないという回答はみられなかった.地域内の人々との交流については,前からそう思うと回答していた人の割合61.8%と,サルの排除と同様に高く,事業後にそう思うようになったと回答している人を合わせると80%近くを占めた.このことから,地域住民は,地域内の人々の交流が,地域内外の人々が交流することよりもこの事業において大事であると考えていることが明らかになった.
| 非常にそう思う | そう思う | そう思わない | 計 (%) |
||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 以前 | 以後 | 以前 | 以後 | 以前 | 以後 | ||
| 内外との交流 | 13.2 | 1.3 | 40.8 | 32.9 | 11.8 | 0.0 | 100 |
| 内部との交流 | 13.2 | 2.6 | 61.8 | 17.1 | 5.3 | 0.0 | 100 |
1)N=72.“以前”は事業実施前からそう思う,“以後”は事業実施後からそう思うようになったという回答を指している.
最後に,以上に明らかになった今回の実験的な取り組みに対する各主体の意識や評価をとりまとめ,参加型猿害対策の意義について考察したい.
まず,外部参加者についてみると,全体として本事業に満足しており,柿を入手できるだけでなく柿取り作業そのものや,地域住民との交流を参加動機としていることがわかった(図3矢印①).同時に,このイベントが猿害軽減という地域の課題解決につながっていることも,参加動機となっていた.また,本事業をとおして,外部参加者の,獣害や猿害に関する意識や興味関心が高まっていた(矢印③).意識や関心の高まりが,獣害対策に従事する外部人材の確保へと直接結びつくかどうかは明らかではないが(点線矢印⑥),少なくとも,本事業のような取組が都市住民の獣害対策参画の契機となっていることが示唆された.

住民参加型猿害対策事業の意義と可能性
1)本研究で明らかになった関係性は実線矢印,推察は点線矢印で示す.
一方,地域住民がイベントに参加した動機は,柿の消費や,猿害の軽減であった(矢印②).そのうえで,地域住民全体の本事業への期待は,「地区内でのサル対策への関心づけ」や「放置柿の徹底した取り除き」であることから,地域内での意識共有と,外部人材の支援による餌資源の徹底した排除の2点が,事業の受入動機であったと考えられる.また,本事業をとおして,サルや柿の資源管理意欲の向上がみられたほか(矢印④),地域外の人々との交流意欲も向上していた.地域内の人々の関わりについては,事業の実施前後どちらにおいても必要と考えていた人が多かった.このことから,地域住民の対策意識の啓発の機会として本事業を位置づけていると考えられた(矢印④).被害が深刻な地域でありながら,日常的な対策に従事していない住民が2割を占める現状において,対策意識啓発の新たな方法として本事業が認識されている可能性が考えられる.
受入地域の畑地区は,篠山市のなかでも特に猿害がひどい地区であり,そうした地域で,事業を通してサルを利用しようと考えるようになった人が見受けられ,その割合が柿の利用と同程度だったという結果は,予想を超える成果である.前からサルを地域づくりに利用してはどうかと考えていた地域住民も存在していたことから,事業はそれらが発露する機会となっており,事業が実施できたのも,こうした住民の理解があったからであるとも考えられる.
ただし,サルの出没や被害が減少したかどうかは本研究では明らかにできていない(点線矢印⑤).しかしながら,地域住民の半分弱である44.7%(n=76)は,本イベントの効果を感じると回答している.さらに,地域住民の半分程度は本事業の継続を希望していることからも,地域側は,猿害軽減効果はさておいて,本事業が重要であることや,外部人材を呼び込む資源となることも認識している.また,本研究では明らかにできていないが,地域住民の対策意欲が向上し,対策活動が頻繁になることで(点線矢印⑦),集落ぐるみの対策の向上または維持に間接的につながることが予測できる.以上より,外部人材による参加型猿害対策を放棄果樹の管理という誘引除去対策として位置付け,それを,日々の対策活動に参加する地域住民の意識啓発の機会として活用する形で,今後の地域主体の獣害対策を推進することができるのではないだろうか.
(2) 事業運営の現状と課題今回の事業経費を参加者数で割ると一人当たり約1,700円となる.この額は,参加者が支払ってもよいと考えている額(500円~1,000円)よりも高い.バス代に限ると,一人当たり約600円となることから,事業の運営をボランティアでおこない,交通費だけを徴収する形にすると,受入地域側が負担する費用は少なくて済む.1年目は事業の仕組みづくりなどで外部の視点が必要であり,今回のような大学の関わりがなくとも,コンサルタント会社や,NPOなどと連携し,初年度には補助金などを取得する形で,他地域でも実践可能と考えられる.中間支援組織が入った場合には,その事務費用をねん出するために,参加費を多く徴収する必要がある.それにより参加者が減ってしまうと,柿を徹底して摘果できなくなってしまう.そうなると,本来の事業の趣旨から外れてしまうため,できるだけ安価で多くの人が参加できるような仕組みのまま継続する必要があるのではないだろうか.
(3) 今後の可能性今回の社会実験は,まだ途についたばかりであるが,獣害(猿害)を観光資源とし,それが,多様な人の参画やインクルージョンをすすめるという可能性を,みることができた.これらをうまく進めていくために今後克服していくべき課題は,柿の有効活用である.事業に参加した地域住民は,柿は活用できると意気込んでいたが,アンケートの結果から,柿の利用について否定的な意見も見受けられた.これは活用されずに捨てられた柿の存在が影響しているのではないかと考えられる.
本事業により猿害が軽減できたならば,地域側の参加や,外部参加者を呼び込む動機はあがると考えられ,柿などの物的報酬の存在と被害の軽減を外部参加者・地域側が実感できる仕組みをつくることが,獣害対策を地域資源として利用するうえで必要なことであると考えられる.
本研究は,篠山市畑地区のみなさんのご協力をえておこなうことができました.ここに,心より感謝の意を表します. また,本研究はJSPS科研費26310309の助成を受けておこないました.