農林業問題研究
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研究論文
インドネシア稲作の競争力と費用効率性
エルノイス  アントリヤンダルティ
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2015 年 51 巻 2 号 p. 74-85

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抄録

本稿は,インドネシア稲作部門の費用効率性が改善されることによって,どの程度,競争力が向上するかについて検証することを目的とする.そのために,まず,農業省のPATANASデータを用い,確率的フロンティア関数分析の手法により,主要なコメ生産地域5州における稲作経営の費用非効率性を測定する.さらに,計測された費用非効率性の値と,経営規模など他の関連変数とを,別途推計した国内資源費用比率(Domestic Resource Cost Ratio)に回帰することにより,費用非効率性への影響を推計する.その結果,費用効率性は,経営規模が小さな中部ジャワ,および,東部ジャワにおいて高い一方,これらの地域における国際競争力は低く輸入米と競争できないことが明らかとなった.また,費用非効率性,その他の関連変数とDRCの回帰分析の結果は,中部ジャワ,東部ジャワにおいて,費用非効率性の改善だけでは輸入米と競争可能な水準まで国際競争力を向上させることはできず,規模の拡大が必要であることを示した.以上の分析結果から,経営規模が零細で競争力の弱い中部ジャワや東部ジャワにおける競争力向上のためには,農家の規模拡が不可欠であると結論付けることができるのだが,ジャワの分散零細錯圃制度を考えると,その実現は容易ではないであろう.

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© 2015 地域農林経済学会
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