農村計画学会誌
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論文特集号
3 指標によるローカル・レベル気候変動脆弱性評価
韓国京畿道の四つの地方自治体の事例から
崔 誠允山路 永司
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2015 年 34 巻 Special_Issue 号 p. 261-266

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抄録
気候変動適応策において地域的アプローチの必要性がより重要視されているのは、類似した異常気象現象に遭遇しても、地域の地理的条件、社会経済的状況などによりその影響が異なるからである。韓国ではグリーン成長基本法(2010)に基づき、地方自治体に対し気候変動適応戦略の設定が義務付けられてはいるものの、気候変動の脆弱性評価法などの地域インフラ整備基準の明示には至っていない。このため地域の気候変動適応策の策定は、国家的レベルに加えて各地域の特性や条件などに対応し得る脆弱性評価法の研究開発が求められている。本研究ではこのような問題意識に基づき、先行研究の検討を通じて指標を選定、正規化したうえで、京畿道の代表的な農村地域(漣川、加平)と都市部(水原、城南)における対応対策の優先順位導出のための脆弱性の構成要素を分析した。なお、気候変動の脆弱性概念の枠組みは、気候変動への曝露(climate exposure)、システムの感受性(sensitivity)、適応能力(adaptive capacity)により構成した。分析結果を要約すると、先ず気候変動曝露指数では農村部都市部ともに気温上昇と豪雨、干ばつが曝露されているが、気温上昇は水原と漣川が、豪雨・干ばつは城南と加平が曝露指数が大きいことが分かった。次に、感受性および適応能力は、農村地域がより脆弱であることが示されたが、特に農業が主をなす農村地域の低所得層、高齢化による感度上昇が見られ、また地域の経済、物理インフラストラクチャ、リスク対応制度などを含む気候変動への適応能力も農村地域がより脆弱であることが分かった。以上、本分析により、気候変動による災害から京畿道の都市や農村の被害を防ぎ、軽減するための気候変動対応方針基準、農村地域への適切な方策構築の可能性が提示されたと言える。最後に、多様な気候の変化や脆弱性評価を活用した適応への総合的管理は、環境政策だけではなく低所得層福祉政策や環境産業による地域経済政策などの政策の立案にも寄与し得るであろう。
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© 2015 農村計画学会
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