抄録
「イジロー」は,ユーザが触れて行う身体的動作に反応し,表情や音声を出力してユーザとコミュニケーションするロボットである.作品は円柱型のアクリルケースの中に入出力を行うデバイスを固定し,ケースの中からLEDを光らせることで表情を表現することができる.音声はパーソナルコンピュータに直接接続したスピーカーから出力される.ユーザは「イジロー」を持ち上げて触れたり,置いた状態で触ったりすることができる.「イジロー」は自らは動くことはできないが,ユーザの動作の種類・大きさ・方向性・頻度から表情を変化させ,音声を出力することで自分の感情を表出する.本作品は,これらのインタラクションを行うことにより,ユーザが実際に生きているものと触れ合っているような感覚を引き起こし,ロボットが心を持ったものとして認識され,ユーザが愛着を持った関係形成を行えることを目的として制作した.本作品は公立はこだて未来大学3階ミュージアムや保育園にて展示を行った.展示の結果から,「イジロー」とのインタラクションによって笑い声や驚きの声を上げるユーザが多く確認できた.この結果を踏まえて,有機ELディスプレイを使用しスピーカを内蔵した改良版を制作した.今後はこの改良版を展示して評価し「イジロー」の処理速度の向上とより表現力の高いハードウェアを使用したプログラムの制作を行う.