日本薬理学雑誌
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特集 がん化学療法に伴う神経障害性疼痛―最近の研究動向
『臨床現場からの情報発信』 オキサリプラチンによる末梢神経障害の遺伝的背景
満間 綾子安藤 雄一
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2013 年 141 巻 2 号 p. 62-65

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抄録

がん薬物療法における有害事象として,末梢神経障害を引き起こす薬剤が注目されている.大腸がんのキードラッグであるオキサリプラチン(L-OHP)による末梢神経障害は,蓄積性で用量規定因子である.重篤な場合,治療の遂行が不可能となり,治療効果の障害となる.L-OHPによる末梢神経障害の発現のメカニズムは十分には解明されていない.そこで,シュウ酸(オキサレート)の代謝に関係する2つの酵素であるアラニングリオキシル酸アミノ転移酵素(alanine glyoxylate aminotransferase:AGXT),グリオキシル酸還元酵素-ヒドロキシピルビン酸塩還元酵素(glyoxylate reductase-hydroxypyruvate reductase:GRHPR)の他,解毒酵素であるグルタチオンS-転移酵素(gluthathione S-transferase π1:GSTP 1),および損傷を受けたDNAを修復する除去修復交差相補群1(excision repair cross-complementing gene 1:ERCC 1)の遺伝子多型について,mFOLFOX療法が施行された進行大腸がん患者を対象として末梢神経障害との関連を検討した.その結果,ERCC 1とGSTP 1の遺伝子多型は,L-OHPによる末梢神経障害の発現までの期間と強い関連がみられた.これらの遺伝子多型は末梢神経障害の予測因子であるとともに,その発症機序に関わっている可能性がある.遺伝子多型の頻度やその臨床的意義には人種差が存在する可能性があるため,海外からの研究結果を検証する必要がある.末梢神経障害の精度の高い予測因子が同定されれば,末梢神経障害をきたすL-OHPを避けて治療を行う,あるいは慎重にモニタリングを行うなど,個別化医療の進展に寄与するものと考えられる.

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