2023 年 22 巻 2 号 p. 2_1-2_11
旅行先などで,印象的な情景を写真に収めた際,写真に記録された風景と自身が肉眼で捉えた風景との間に大きな違和感を覚えることがある.この現象は,カメラの投影モデルと人間の視知覚の特性の違いが原因のひとつであると考えられる.一般的なカメラが風景全体を平等に捉えるのに対し,人間は風景のなかで興味ある対象を部分的に強調しながら捉える.加えて,仮想シーンでは正確な大きさ知覚が現実シーンよりも難しいことが知られており,仮想シーン上で得た主観的な印象や感動を他者に効果的に伝えることは容易ではない.そこで本論文では,ユーザの注目部分を適度に拡大処理した画像を自動出力するシステム Digitus ViewFinder(DVF)を提案する.注目部分の特定にジェスチャインタフェースを用いることで,ユーザは没入感を損なわずに直観的で正確に範囲を選択できる.そして,試行とともにユーザの拡大率における個人差を学習することで,段階的に提案の精度が向上するサジェスティブインタフェースを実現する.実際にユーザ評価実験から,DVF システムの有意性が確認された.