女性学年報
Online ISSN : 2434-3870
Print ISSN : 0389-5203
ひとり親の女性はなぜ生きづらさを感じるのか
ひとり親の女性の語りから生きづらさの要因を探る
西川 由紀
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ジャーナル オープンアクセス

2024 年 45 巻 p. 26-44

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抄録
本稿は、ひとり親が抱く生きづらさを他者と接するという視座から照射し、生きづらさを生じさせる要因を明らかにするものである。ひとり親の女性の生きづらさに関する研究には、経済的資源の欠如の観点から学歴や就労と生きづらさを接合したものが積み重ねられてきた。他者との関わりのなかで生じる生きづらさに関してもひとり親やひとり親世帯の子どもの声が蓄積されてきた。一方で、ひとり親の女性の生きづらさに関する経験と語りには、その多様性がゆえに散在した状況があり系統立てる必要性が指摘されている。本稿では、ひとり親の女性の語りを「つながりの確認」「存在価値の証明」の観点から分析し、「ひとり親に関する負の先入観に対して抵抗を示す」「いるはずの家族がいないことで子どもの心情を憂慮する」「ひとり親であることを申し訳ないと思う」「逸脱者に向けられるまなざしから逃れる」の4つが析出された。系統立てを意識しつつ、これら4つのカテゴリーを生きづらさの要因が身体の外部にある「外在的な生きづらさ」、身体の内部にある「内在的な生きづらさ」に整理した。外在的な生きづらさの要因として、ふたり親というマジョリティから少数者化、マイノリティ化されるがそれにあらがえない状況があり、内在的な生きづらさの要因として、周囲から向けられるまなざしや言葉とひとり親の女性自身が持つ意識との間に隔たりがあるといえる。ひとり親の女性は、これら二重の生きづらさを他者との関わりのなかで負うことになると考えられる。さらには、外在的な生きづらさと内在的な生きづらさの変化の速さが異なることに、ひとり親の女性は直面し、自身の意識が追い付かないままにひとり親として振舞うことになる。本稿は、相も変わらずひとり親の女性の生きづらさを生み続けようとする構造を変える兆しのない日本社会への筆者のクレーム申し立てである。
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© 2024 日本女性学研究会『女性学年報』編集委員会
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