女性学年報
Online ISSN : 2434-3870
Print ISSN : 0389-5203
身体で交差する帝国の知とジェンダー
京城帝国大学産婦人科教授・高楠榮による「体質研究」を事例に
大室 恵美
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ジャーナル オープンアクセス

2025 年 46 巻 p. 3-25

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抄録
植民地主義とジェンダーが交差する地点における、植民地における女性たちの研究はいまだに日本のフェミニズム・ジェンダー研究の中心課題とみなされていない。そのような「日本人」中心のフェミニズム・ジェンダー研究を克服しようとする一つの試みとして、本研究では宗主国の医師が現地の女性の身体に介入する手段となった産婦人科学に注目し、京城帝国大学産婦人科教授・高楠榮が1930年代に行った「体質研究」を調査・検討した。高楠は日本人女性の数値を「正常」として朝鮮人女性をそこから「外れた」存在と定義し、その原因を食事という民族的・文化的慣習に求めた。これは朝鮮人が「文化的に劣っ」ているから日本人に「同一化」しても良いという発想の科学的根拠を提供するものである。そしてこれは日本人男性が女性間の民族的序列を科学によって作り出した事例ともいえる。この高楠の研究は朝鮮人女子医学生らによる反論があったものの顧みられることはなく、日本本国の学術界を通した継承、流通がなされた。植民地での研究が本国に回収・集積され、帝国の広がりへと還元される学知の一形態となったのである。
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© 2025 日本女性学研究会『女性学年報』編集委員会
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