抄録
薙刀は、長い柄の先に反り返った長い刃をもつ武器であり、平安時代中期(900~1050年)に「長刀」と記され、その後室町時代になると「薙刀」の文字が用いられるようになった。薙刀は、平安後期の後三年の役(永保3年[1083年]から寛治元年[1087年])の室町中期まで、僧兵と武士が用いた主要な武器の一つであったが、室町時代後期から安土桃山時代にかけての時期(1467年~1600年)、鉄砲や槍の出現によって、次第に戦場で使用されなくなった。そして、江戸時代になると、薙刀は武家女性が用いる武器とされるようになったが、この変化の開始時期と原因はいまだ不明瞭である。本研究では武士が使用する武器としての長刀の登場と発展を概観したうえで、薙刀などの武器を持つ武家女性の図像などのアーカイブ史料の分析を通じて、武家女性の武芸教育がいかなるものだったのか、さらには大衆文化に登場する薙刀を持つ武家女性の特異性を明らかにすることを目指す。