人類學雜誌
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台湾の左鎮にて発見された頭頂骨片
鹿間 時夫林 朝〓下田 信男馬場 悠男
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1976 年 84 巻 2 号 p. 131-138

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抄録

右および左頭頂骨片が台湾左鎮郷菜寮渓の河原から発見された。化石化や磨耗の程度から,台湾層(中期沖積世)と崎頂層(ヴィラフランカ階)にはさまれた礫層に由来すると考えられる。
右頭頂骨片は,矢状縫合が閉鎖せず,中硬膜動脈溝が浅く,上側頭線も弱い,また厚径も比較的小さい(4.1~5.6mm)ことなどから,若い個体のものと推測される(Fig.1,2, Table 1,2)。
左頭頂骨片は,中硬膜動脈溝が比較的深く,上側頭線が顕著であり,厚径も右頭頂骨片より大きい(4.9~6.5mm)ことなどから,成熟した個体のものと推測される(Fig.3,4, Table 3)。この骨片の表面には,多数の鋭い条痕が見られ,人工的に形成された可能性が高い(Fig.6)。
両骨片の形態学的特徴は,縄文時代あるいは現代日本人と本質的に差異がない。従ってこれらはHomo sapi ens sapiensに属すると考えられる。
右頭頂骨片のフッ素およびフンガンの含有量から推定された年代は,約二万年前から三万年前である(Fig.7,8)

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