抄録
1975年台湾蘭嶼に住むヤミ族の調査を行ない,その生体解察と計測の結果を鳥居(1897)と金関ら(1947)の調査結果と比較した。ヤミ族は台湾原住民諸族のなかで扁平な後頭を有するもの,上眼瞼のヒダの内眼角に着かぬものの頻度が最も多く,頭部や顔の計測値の絶対値が最小である等の形質的特色を有する。鳥居の調査以来の80年間に,各計測値は漸次増加して来てはいるがその差は少ない。短頭化とカオの長型化の傾向がみられた。観察項目では殆んど変化が認められない。
ヤミ族のようにあらゆる意味で隔離された集団の形質の時代的な変異は極めて少ないものであると考えられる。