抄録
椎体が前方の低いクサビ形を呈する楔状椎の出現頻度を東京都一橋高校遺跡出士の江戸時代前~中期(17世紀)人骨男37体女12体につき調べ,その成因を考察した。椎体垂直示数が120以上を示す高度の楔状椎は男13体(35%)に見られ,第12胸椎と第1腰椎およびこれと隣接する椎体に1~3個連続して出現する.女では高度の楔状椎は2体(17%)にすぎず,いずれも第12胸椎と第1腰椎に2個連続していた。これらの楔状椎はおそらく当該部の脊柱の後弯を伴ったと推定され,また後弯により楔状化が促進されたと思われる。壮年~熟年期男性の胸腰移行郎に多発したこのような楔状椎は,おそらく習慣性の胡座(あぐら)にその原因が求められよう。