人類學雜誌
Online ISSN : 1884-765X
Print ISSN : 0003-5505
ISSN-L : 0003-5505
アムール•サハリン地域諸集団の頭蓋形態について
石田 肇
著者情報
ジャーナル フリー

1990 年 98 巻 2 号 p. 137-148

詳細
抄録

近世においてアムール河流域とサハリン島には,アイヌ,ニブフ,ウリチなどの民族集団が数多く分布していた.今回は,サハリンに住むサハリンアイヌとニブフ,アムール河流域のウリチ,ナナイ,ネギダールおよびオロチの6集団と靺輻文化のトロイツコエ遺跡から出土した頭蓋骨を用いてその計測的および非計測的特徴を調査した.ソ連の人類学者がバイカル型と分類している群に含まれるアムール河流域の4集団は互いによく類似する.レヴィンによりサハリン•アムール型とされたニブフは頭蓋形態でははっきりとした独自の形質を持たないようである.頭蓋形態小変異では近世のアムール集団と似るトロイツコエは,計測値を用いた場合,他と大きく異なる.一方,サハリンアイヌはすでに先学が指摘しているように,残りのモンゴロイド集団とは形態学的に異なるようである.

著者関連情報
© 日本人類学会
前の記事 次の記事
feedback
Top