Anthropological Science (Japanese Series)
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原著論文
下本山岩陰遺跡(長崎県佐世保市)出土の縄文時代前期・弥生時代人骨
海部 陽介坂上 和弘河野 礼子
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2017 年 125 巻 1 号 p. 25-38

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抄録

長崎県佐世保市に所在する下本山岩陰遺跡から,1970年に麻生優らによって発掘された人骨を整理したので報告する。この資料中には,縄文時代前期に属する比較的保存のよい2体と,弥生時代に属する合葬された男女2体,その他の人骨が確認された。縄文時代前期人骨について,少なくともほぼ完全な1体には縄文時代人的な形態特徴が色濃くみられた。弥生時代人骨は,1個体に高顔傾向が認められる点に留意しなければならないが,全体的に北部九州弥生時代人より縄文時代人と類似する。この形態特徴と遺跡の地理的位置の両面から,本人骨は,一般に縄文時代人の系譜を継ぐとみなされている,いわゆる西北九州タイプの弥生人集団(在来系の弥生人集団)に含めることができるだろう。これらの人骨にみられた高頻度の骨折,同地域内での咬耗ならびに口腔衛生状態の変化についても合わせて報告する。

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© 2017 日本人類学会
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