Anthropological Science (Japanese Series)
Online ISSN : 1348-8813
Print ISSN : 1344-3992
ISSN-L : 1344-3992
下顎第2乳臼歯エナメル象牙境の形態学的研究
佐々木 佳世子金澤 英作
著者情報
ジャーナル フリー

1999 年 107 巻 2 号 p. 165-178

詳細
抄録

エナメル質歯冠表面 (OES) においては不明瞭であった形質でもエナメル質の発生の起点となるエナメル象牙境 (DEJ) では比較的鋭く明瞭な隆線や突起として観察される。そこで歯冠に見られる10の形質について出現頻度を調査し, 下顎第2乳臼歯(m2) のDEJとそのOES, m2のDEJと下顎第1大臼歯 (M1) のDEJ29) を比較した。さらにこの4グループ間の距離分析を行い, 類縁性を明らかにした。その結果, m2の頬側面での各形質の多くは, OESよりもDEJで有意に出現頻度が高く, m2とM1のDEJの比較では, 近心頬側面辺縁隆線Protostylid でm2のほうが有意に出現頻度が高かった。咬合面では, 第7咬頭を構成す?Metaconid distal accessory tubercle m2のOESよりもそのDEJで有意に出現頻度が高く, m2とM1のDEJの比較では, Middle trigonid crest, Distal trigonid crest, 第6咬頭, 第7咬頭, 近心副結節でm2のほうが有意に出現頻度が高かった。距離分析ではDEJ同士あるいはOES同士の距離が近く, 特にm2のDEJとM1のDEJの類縁性が際立って高かった。
以上のことからm2のDEJは, m2のOES, M1のDEJ, M1のOESのいずれよりも, 系統発生的に古い歯の形質を多く保有していること, また4グループ間で, m2とM1のDEJの類縁性が最も高いことが判明した。

著者関連情報
© 日本人類学会
前の記事
feedback
Top