4年にわたる野外調査と飼育観察に基づき, シノビグモ Cispius orientalis YAGINUMA の生息環境, 交接行動, 産卵行動, 卵のう作製後の行動および生活環について記載した。
調査個体は, 山間の溪流や湧き水付近の, 極めて湿気の多い地域に生息している。交接は求愛行動なしに雄が突然雌を襲う形で行われる。産卵は年1回であり, 雌は楕円体の卵のうを作製し, これを糸疣に付けて徘徊後, 岩陰で約1ヵ月間卵のうの保護を行う。出のうした子グモは親の糸疣に付いた空の卵のう上に集まる。雌雄共2~4齢期には粗い不規則な網を張る。4~6齢期で越冬を行い, 翌年の8月下旬から10月中旬にかけて9齢で成体となる。生存期間は2~3.5年であると思われる。